一般法務

商標法と著作物


商標権には、当該商標の使用権と、第三者による当該商標の使用を禁止する権利が含まれています。類似する商標、類似する指定商品、又は、類似する指定役務の範囲で、商標権者は、使用権と禁止権を有します。
もっとも、類似する商標が市場に表れている場合、直ちに第三者による使用を禁止できるかというと、そういうわけではありません。商標には、商品やサービスの製造者や提供者を明示する機能があり、これを出所表示機能と呼びますが、この出所表示機能を害する使用でなければ、差止め等の対象にはなりません。言い換えると、商品やサービスの製造者や提供者を誤認するおそれのない使用は、商標法上、許容されるものといえます。
例えば、以下の例のように、商標制度は、著作物の創作活動を制約するものではありません。


POS事件

「Problem Oriented System(問題志向システム)」という診療記録を作成する方式の略語である、「POS」の商標権者Xが、「POS実践マニュアル」という書籍を販売するYに対して、商標権侵害を主張した事案

裁判所は、Yの商品であることを識別させるための商標として各書籍に付されたものではないとの理由で、出所表示機能を害する使用ではなく、Yの標章は、Xの商標権を侵害するものではないとしました。



UNDER THE SUN事件

「UNDER THE SUN」の商標権者Xが、「UNDER THE SUN」と標記した音楽CDを販売したレコード会社Yに対して、商標権侵害を主張した事案

裁判所は、文字の大きさや位置、アーティスト名の標記、Yの社名表記などから、CDに表示された「UNDER THE SUN」という標章は、CDに収録されている曲の集合体すなわち編集著作物であるアルバムに対して付けられた題号(タイトル)であり、CDの出所を表示するものではなく、Xの商標権を侵害するものではないとしました。


著作権

著作権法上、著作物は、以下のように例示されています(著作権法10条)。

①小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
②音楽の著作物
③舞踊又は無言劇の著作物
④絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
⑤建築の著作物
⑥地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
⑦映画の著作物
⑧写真の著作物
⑨プログラムの著作物

あくまでも例示であり、著作物が上記①~⑨に限られるわけではありません。

すべての表現が、著作物となるわけではありません。以下の要素を持つ表現が、著作物となります(著作権法2条1項1号)。

①思想又は感情を
②創作的に
③表現されていること
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属すること

①においては、単なるデータや歴史的事実と区別されなければなりませんし、②においては、タイトルやキャラクターの名称、新聞記事の見出し等と、③においては、単なるアイデアと、④においては、実用品の基本的なデザイン等とそれぞれ区別されることになります。


著作権者の有する権利

著作権者は、①著作権と②著作者人格権を有します。


① 著作権

著作権は、以下の支分権と呼ばれる権利に分かれます。
・複製権(著作権法21条)
・上演権及び演奏権(22条)
・上映権(22条の2)
・公衆送信権(23条)
・口述権(24条)
・展示権(25条)
・頒布権(26条)
・譲渡権(26条の2)
・貸与権(26条の3)
・翻訳兼、翻案権等(27条)
・二次的著作物の利用権(28条)


② 著作者人格権

著作者人格権は、以下の権利に分かれます。
・公表権(著作権法18条)
・氏名表示権(19条)
・同一性保持権(20条)


著作権者は、①著作権、②著作者人格権の基づく各権利の対象となる行為を独占的に行うことができ、著作物を無断で利用する者に対して、差止め等を求めることができます。
著作権者が採ることのできる対抗手段は、差止請求、損害賠償請求、刑事罰を求める告訴等となります。


著作権の侵害

他人の著作物を知った上で作品を作り(依拠)、類似する作品を創作した場合(類似性)、著作権の侵害となる場合があります。
「依拠」と「類似性」の判断は、事例により様々です。


二次的著作物

二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、変形し、又は脚色・映画化、その他翻訳することにより創作した著作物をいいます。二次的著作物を利用したい方は、二次的著作物の著作権者の他、原著作物の著作権者の許諾も得なければなりません。


権利処理

著作物を利用するために、著作権者から利用許諾を得たり、権利譲渡を受けたりすることを、権利処理と呼びます。

権利処理を必要とするか判断するために、事前に、以下の①~④の検討を経る必要があります。

①利用したい対象は「著作権」か、
②利用方法は著作権の及ぶ範囲か、
③著作権の保護期間の範囲内か、
④制限規定(例外的に著作権者の権利を制限して、著作権者から許諾を得ずに著作物を自由に利用できるという規定。例えば、私的使用、図書館等における複製、教育機関における複製、引用など)により自由に利用できないか、

①~④の検討で、自由に利用できることがわかれば、権利処理は不要となります。

権利処理は、大きく、利用許諾と権利譲渡に分かれます。いずれも契約となりますので、専門家による契約書作成をお勧めいたします。


イラストの著作権

著作権が発生するために必要な創作性

著作権として保護されるためには、イラストであっても創作性が必要であることに変わりありません。そのため、ありふれた作品では、著作権は発生しません。
例えば、車や家、木のイラストは、簡単なものであれば、創作性がなく、ありふれた作品として、著作権として保護されません。


不正競争防止法上の保護期間

不正競争防止法には、取引をする上で、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡したり、展示したりすることなどを禁止する規定があります。
この保護期間は、商品の発売から3年間となりますので、留意する必要があります。


偶然似てしまった場合

著作権(複製権)侵害といえるためには、依拠性が必要です。そのため、偶然に似たものができた場合は、依拠性がないため、著作権侵害とはなりません。
実際に裁判で依拠性の有無が争われる場合、偶然にしてこれほど似ることがあるかという視点から判断されることになります。


同一性判断

同一性が認められるか否かは、見た目によって判断しますので、作品のアイデアや描画方法、画風が似ていること自体は問題ありません。
また、同一性判断の際は、本質的な特徴が残っているかどうかがポイントとなり、元の作品の本質的な特徴が失われている場合は、同一性はないということになります。


納品後の改変

イラストを納品した後、納品先によるイラストの改変を要望されることがあります。この場合、「著作権を譲渡する(翻案権・二次的著作物に関する権利も含む。)」という内容の契約で、「著作者人格権を行使しない。」という条項を含むものであった場合、改変を禁止することは難しくなります。
そのため、イラストの作者は、あらかじめ許容できない改変の範囲を考え(例えば、キャラクターの服装や、姿勢、向き等)、「前項において、乙は甲に対して、本件キャラクターが新たな〇〇(許容できないこと)をすることを認める趣旨は含まない。」と契約に盛り込めるようにすべきです。
なお、著作権の保護が及ぶのは外見のみですので、キャラクターの性別や性格などのコンセプトは、納品先にある程度の裁量が認められます。


著作権譲渡後の制作実績としての使用

イラストの作者が、イラストを納品して、著作権を譲渡した後、自身の制作実績として、ウェブサイトに当該イラストを使用することができる場合が多いです。
もっとも、ウェブサイト上、メインで掲載したり、著作権者であると受け取られるような表記をしたりという場合には、使用できない場合があります。
そのため、著作権譲渡の契約時に、制作実績として掲載を許容してもらうことや、契約後であっても、適法な引用(著作権法32条)によって掲載すること、納品先の承諾を仰ぐことが必要となります。


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