一般法務

キャンセル料について

ホテル・旅館業において、飛び込みのお客様というのは多くないのではないでしょうか。 一般的には、事前に予約がなされます。
ホテル・旅館によっては、事前予約の場合に割引コース等を用意しているところも多いでしょう。
しかし、このような業態において避けては通れないのが「予約のキャンセル」です。
この場合の法律関係について解説します。

キャンセル料の金額について


お客様とホテル・旅館との間で契約が成立すれば、双方がその契約に従う義務が発生します。
したがって、もしもお客様が実際に宿泊しなかったとしても、お客様は定められた宿泊代金を支払う義務があります。
例えば、当日にキャンセルの連絡が入ったとしたら、そのお客様のために空けておいた部屋や準備していた料理等は全て無駄になってしまいます。
したがって、これらの対価は請求する必要があるでしょう。
多くのホテル・旅館で当日キャンセルのキャンセル料が100%となっているのは、このような考え方からです。

もっとも、宿泊日が差し迫っていない時期にキャンセルがなされた場合、ホテル・旅館としては新たな予約獲得の可能性があります。
そのため、キャンセル時期に応じてキャンセル料を段階的に設定していく方式が一般的かと思われます。
この「一般的」というのが実は重要な点です。
ホテル・旅館のキャンセル料については、消費者契約法9条1号という法律が適用されます。


消費者契約法9条

次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分


上記の条文を噛み砕いてキャンセル料に読み直すと、
ホテル・旅館のキャンセルに伴うキャンセル料の定めは、キャンセルの理由や時期等の区分により、同業他社における平均的な損害(キャンセル料)は請求できるが、これを越える部分は無効になる
と言うことになります。
この「平均的な損害」を一義的に判断することは難しいのですが、基本的には
・どの時期にどの程度の準備をしている必要があるかという点
・どの時期なら別の予約を入れられる見込みがどれだけあるかという点
を考慮しながらキャンセル料についての設計をしていく必要があるかと思われます。

ホテル・旅館ではありませんが、飲食店のパーティ予約に関して、2ヶ月前のキャンセルで100%のキャンセル料を請求したことについて、「平均的な損害」を超えているとし、請求額の5分の1程度のキャンセル料(営業保証料)を認めた裁判例があります(東京地判平成14.3.25)。


キャンセル料を請求できる場合、請求できない場合

キャンセル料の定めは、上記の通り「平均的な損害」を超えない限り基本的には有効です。
しかし、キャンセル料は、あくまでお客様との契約から生じるものなので、お客様がキャンセルをした際にキャンセル料が発生することを承知していなければなりません。
したがって、約款等で明確に詳細に規定しておき、予約完了の際にも明確に告知をしておく必要があります。
ホテル・旅館業の場合、参考書式として官公庁が作成したモデル宿泊約款がありますので、これらを参考に、キャンセルに備えておくべきです。

また、いわゆる不可抗力によるキャンセルの場合は、お客様には帰責性がないため、キャンセル料の請求をすることができません。
例えば、地震などの天災や、交通機関の麻痺による場合等は、お客様の努力ではいかようにもできないことですので、このような場合にはキャンセル料の請求はできないことになります。
もっとも、ここにいう「不可抗力」に何が該当するかというのは少々判断が難しい場合があります。

例えば
・予約日の前日時点で、大型台風の直撃が予想されていたためキャンセルされたが、結果として進路をそれた場合
・旅館・ホテルの所在地の近隣で感染症患者が発生した場合
・新型コロナウィルスによる緊急事態宣言等により政府から自粛要請が出された場合
これらは、一律キャンセル料を請求できる、できないと決め付けることができません。
それぞれの契約内容や具体的事情を総合的に検討して判断をする必要があります。

キャンセル料の規定方法から、請求の可否についてまで、お悩みがあればまずは弁護士にご相談ください。


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