一般法務

試用期間(研修期間)

試用期間とは、正規の従業員として雇用する前に、会社に合った人材か(人物・能力)を評価して、本採用(正社員)とするかどうかを判断する期間です。このような試用期間を設けるのは、多くの会社は、長期間の雇用を前提とした会社の仕組みを持っているため、長く務めることができる人材であるか判断する必要があるためです。


1 試用期間の法的性質 ~ 解約権留保付雇用契約 ~

試用期間中の労働契約は、採否決定までの段階では十分調査ができない資質、性格、能力について、さらに観察・調査をした上で、最終的な採否を決定するための解約権付きの労働契約とされています(三菱樹脂事件 最判昭和48.12.12)。


2 試用期間の経過

解約権が行使されずに試用期間が満了した場合には、特段の意思表示なく、そのまま通常の労働契約関係に移行することとなります。


3 試用期間の延長

試用期間の延長は、就業規則などで延長の可能性及びその事由、期間などが明記されていない限り、試用期間中の労働者を害することとなるため、無効と考えられています。


4 試用期間中の解雇や本採用拒否の法的性格

留保された解約権の行使に当たり、試用期間中の契約関係は雇用契約である以上、この解約権の行使は、「解雇」に該当します。


5 解約権の行使の可否

最高裁は、「通常の雇用契約における解雇の場合よりもより広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきである」と考えつつも、解約権の行使は解雇であることには変わりないことから、「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認される場合」にのみ有効としています。

一般的には、この客観的に合理的な理由の判断における会社の裁量は、
「正社員に対する解雇」→「試用期間中の解雇」→「内定取消し」
の順で、広く認められる傾向にあります。

但し、試用期間中であっても、解雇権濫用の法理の適用(労働契約法16条)、労災の療養中の解雇制限)(労基19条等)、入社後2週間経過後の解雇予告規制(労基21条4号、20条)の適用があるため、注意が必要です。


6 具体的事例


(1)解約権行使が有効とされた事例

  a 人事、財務、労務関係の秘密や機微に触れる情報についての管理や配慮ができる人材であることが前提で採用された従業員が、会社の重要な経理処理のミスについて、慎重な検証や限定された担当者らとの対処方針の検討も経ずに、突然、必要もないのに全社員の事務連絡等の情報共有の場で決算書に誤りがあるという発言を行なったケース(東京高判平成28.8.3)。
b ネイティブレベルの語学力で証券アナリストレポートを作成する能力を持ち、即戦力の専門職として採用されたにもかかわらず、採用を決定付けたレポートはネイティブの配偶者に見てもらって作成した文章であったことを秘匿していた事実が明らかになったケース(東京地判平成25.1.31)。
  c 環境保全工事等を業とする会社の技術社員として採用された従業員が、最低限守るべきことを守らず同僚等の生命身体に対する危険を有する行為を行ったこと、時間を守れないこと、睡眠不足に対する度々の注意


(2)解約権行使が無効とされた事例

  a 営業職として試用期間6か月の約定で中途採用された従業員について、手数料収入が決して高いものではなかったものの、わずか3か月強の期間で当該従業員の資質、性格、能力等がその会社の従業員としての適格性を有しないとは到底認めることはできないとしたケース(東京地判平成21.1.30)
b 社会保険労務士事務所に雇用された社会保険労務士が、申請手続前に事前確認を行わなかったものの、事前確認の業務命令はなかったこと、実務経験に乏しい初心者であることを前提に採用されていたことから解雇の相当性は基礎付けられないとされたケース(福岡地判平成25.9.19)。
  c 土木工事の設計と目的とする会社に設計図面の作成業務に従事するものとして採用された従業員について、当初担当した作業は不十分な点はあったが、その後は指示に従い要求どおりの作業を完成できていたことから基本的な設計図面の作成能力の適性はあるとされたケース(東京地判平成27.1.28)。


7 試用期間中の解約権行使に向けた対策

従業員の資質や改善の可能性の有無を明らかにするため、指導と改善の有無の結果を残しておく。
試験を行い、能力を客観的に把握する。
採用時に、どのようなレベルの能力を求めており、どのような能力があることを前提として採用するか、できる限り客観的なものを明示する。
などの対策を講じるべきでしょう。

 以上、試用期間中のトラブルやその予防については、一度弁護士に相談してください。


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