一般法務

ハラスメント

近年ハラスメントに対する社会の関心は高まっています。トラブルが顕在化することを防ぐためには、事前に対策を講じる必要があります。
ここでは、ハラスメントとは何なのか、どういう行為がハラスメントに該当するのか等、ハラスメント全般について紹介します。



ハラスメントの種類


ハラスメントとは、他者への嫌がらせ、いじめ全般をいいます。様々な場面で様々な種類のハラスメントがあります。

職場でのハラスメントには主に、
 ・ セクシャルハラスメント(セクハラ)
 ・ パワーハラスメント(パワハラ)
 ・ モラルハラスメント(モラハラ)
 ・ マタニティハラスメント(マタハラ)
があります。


セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクハラは性的な要素を伴う暴力、嫌がらせをいいます。



セクハラの分類

セクハラにも種類があり、男女雇用機会均等法11条1項では、①対価型セクハラ、②環境型セクハラが規定されています。


① 対価型セクハラ

セクハラに対する対応により労働者が不利益を受ける場合を「対価型セクハラ」といいます。
具体的には、
・職場の上司からのデートの誘いを拒否したところ、解雇された
・出張中のタクシー内で、上司が体を触ってきたため抵抗したところ、異動になった
・狭い職場内で、上司が性的な話をしてきたり、画像を見ていたりしていることを注意したところ、降格になった
等のケースがあります。


② 環境型セクハラ

セクハラにより労働者の労働環境が悪化している場合を「環境型セクハラ」といいます。
具体的には、
・職場内で、上司が、労働者の体を不必要に見たり触ったりするため、精神的に感じ、仕事が手につかなくなった
・職場内で、同僚が、性的な話をしたり、内容をLINEで送ったりしてくるため、仕事に集中できなくなった
・職場内で、上司が、わいせつなポスターが張っていたり、わいせつな画像を見ていたりするため、仕事に集中できなくなった
等のケースがあります。


パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)を定義する法令はありません。一般的には、厚生労働省の提言する「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」という定義が採用されています。


パワハラの分類

パワハラ行為は、①身体的な攻撃、②精神的な攻撃 、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害、の6類型に分類されています。もっとも、実際のパワハラ行為は、複数の類型に跨るものであることが多いです。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
 例:殴る蹴る。丸めた新聞紙で叩く。

②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
 例:他の従業員の前で怒鳴る。他の従業員を宛先に含めて罵倒される。

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
 例:1人だけ離れた席にされる。飲み会などのイベントに出席させない。

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
 例:不可能な達成目標を立てさせ、達成できないと叱責する。1人で終わらないような仕事を押し付けられる。

⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
 例:事務職採用の者に草むしりを延々とさせる。

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
 例:交際相手や配偶者の悪口を言う。


違法性の判断基準

裁判上では、パワハラ行為の違法性判断の基準を、被害者と加害者の職務上の地位・関係や、行為の場所・時間・態様、被害者の対応等の諸般の事情を考慮して、行為が社会通念上許容される限度を超え、あるいは、社会的相当性を超えると場合とされています。


裁判例

パワハラを直接的に律する立法はまだありませんが、社会的な問題として注目されるようになってから久しく、裁判上では様々なケースが争われてきました。 いくつか裁判例を紹介します。今後の予防策の構築や実際に生じてしまった事案に対して会社としての対処する際に参考にしてください。


事例1 東京地判H20.11.11(美研事件)

化粧品販売会社Aにおいて、美容カウンセラーのXの上司らが、Xを常時監視するような状態に置き、新人カウンセラーを近づけさせず、Xを?つきだと言うなど、Xに罵倒やいじめを行い、また、Xにテレフォンアポインターへの異動を命じた結果、Xがうつ病を発症した事案。

→会社Aと上司らの賠償責任が認められた。(類型:②、③、⑤など)


事例2 東京地判H26.11.4(サン・チャレンジ事件)

飲食業を経営する会社Aにおいて、ある店舗の店長Xの上司が、Xのミスに対して、「馬鹿だな」「使えねえな」といったり、尻や頭、頬を叩くなどの暴行を与えたり、休日にXを呼び出して仕事をさせたり、遅刻に対して罰金を要求したり、客のクリーニング代を負担させたり、交際相手と別れた方が良いと言ったり、交際相手に新しい連絡先を教えないよう言ったり、これに反したXに叱責、暴行、使い走りを命じるなどの行為を行った事案。

→Xの長時間労働やパワハラ行為を認識し又は容易に認識していたのに何ら対策を採っていなかった会社Aの代表取締役に、会社法上の損害賠償責任(会社法429条1項)が認められた。(類型:①、②、③、⑥など)


事例3 広島高判H24.11.1

脊髄空洞症による療養復帰直後で後遺症が残る従業員Xのミスに対して上司が、「もうええ加減にせえ」「辞めてしまえ。足引っ張るな。」「同じことを何回も何回も。」「やめとかれ。」「もう、性格的に合わんのじゃと思う。」「おらん方がええ。」「何をとぼけたこと言いよんだ」「冗談言うな。」などと強い口調でXを責めた事案。

→第一審では、健常者以上に精神的に厳しいものであったことや上司が無配慮であったことからパワハラが認定される。
第二審では、Xの人格や尊厳を侵害する違法性の強いものではなくパワハラに該当しないと判断される。理由として、期限内で仕事を終わらせることが上司の仕事であったことも踏まえれば多少口調がきつくなったとしても無理からぬものであることや長時間の叱責は認められないことなどから、ミスをした直属の部下に対する叱責としては社会的な許容範囲を超えないためとした。

業務遂行と無関係な言動によることが多いセクハラとは異なり、パワハラ行為は業務指導の一貫として行われることも多いため、裁判所により評価が分かれる余地があるのもパワハラ訴訟の特徴です。


事例4 東京高判H15.3.25(川崎市水道局(いじめ自殺)事件)

市職員Xの同僚がXに対していじめを行った結果、Xが自殺した事案。
→管理者的立場に立つ市には、職務行為それ自体だけでなく、他の職員からもたらされる生命、身体等に対する危険についても、具体的状況下で、加害行為を防止するとともに、生命、身体等への危険から被害職員の安全を確保して被害発生を防止し、職場における事故を防止すべき注意義務があるとして、市の債務不履行責任が認められた。

裁判所は、職場内でのいじめ行為について、いじめの制止や加害者から被害者への謝罪などによる被害者の精神的負荷の緩和措置なども管理者の安全配慮義務の内容に含まれるとしました。


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