民法改正(2020年4月1日施行)への対応

2017年5月に成立し、2020年4月1日から施行されている改正民法。
施行の前には消費増税が、そして施行のタイミングで新型コロナウィルスの流行があったことから、民法が改正されたという印象は一般には薄いのではないでしょうか。
しかし、今回改正された点のなかには、医療機関においても無関係といえないものがあります。
今からでも遅くはありませんので、改正点を確認し、迅速にきちんと対応していくようにしましょう。

改正点1「消滅時効」

債権には消滅時効というものがあります。
医療機関においては、患者さんを治療した場合、当然診療費を請求することになります。
患者さんがこれを支払わなかった場合、一定期間が経過すると、請求することができなくなってしまいます。
これを「消滅時効」といいます。

改正前の民法においては、債権の種類によって消滅時効が完成する期間を変えていました。
そして、医療機関による診療費は、3年間で時効が完成するとされていました。


旧民法170条

次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。(略)
一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
二 (略)


これは、一般的な債権に比べて、短い規定になっていました。
この点、今回の民法改正により、診療費を特別短く規定する必要性はないとされ、一般的な債権と同様に以下のとおり規定されることになりました。


改正民法166条

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
① 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
② 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。


場合分けがしてありますが、診療費の請求については、通常「権利を行使することができる時」=「権利を行使することができることを知った時」と言えるため、診療費を請求できるときから「5年間」で消滅時効が成立してしまう、と捉えておくべきです。

従って、時効期間については、これまでよりも2年間延長されたと捕らえることが可能です。


いつの診療から5年間なのか?

施行日である2020年4月1日よりも前に生じた債権は、旧法のまま「3年間」となります。
2020年4月1日以後の診療に対する診療費から改正法が適用され「5年間」となります。
そのため、当分は「3年で切れるもの」と「5年で切れるもの」が混在することとなりますので、債権の時効管理に、よりいっそうの注意が必要となります。


改正点2「根保証」

もうひとつ医療機関として知っておかなければならない改正点があります。
それは、根保証に関しての改正です。

医療機関において、高額な診療を行う場合や、患者さんご本人の資力に不安がある際などに、ご親族等の保証人をつけてもらうことがあり得ます。
この際、通常の保証は、どんな債務を保証するかが予め定まっています。
たとえば、「●●という自由診療を行うと10万円かかる」という場合に、この「10万円を保証する」という形になります。
しかし、医療機関においては、予め診療内容及び診療費を確定させて保証契約を行えることばかりではありません。
たとえば、「●●という病気にかかる一連の入院治療」というような場合、実際退院時になってみなければどのような診療行為が行われ、どの程度の費用がかかるのか事前に確定できないことは珍しくありません。
このように、一定期間の継続的な取引について保証することを「根保証」といいます。

根保証は、保証人側からすると、実際に自分がどのくらいの保証をしなければならないのかが契約時にはまったく分からないという恐ろしさがあります。
そのため、今回の民法改正で、必ず極度額を定めなければならないことになりました。
極度額とは、保証をする限度額のことです。
今までは、「Aさんの入院治療に関する一切の債務を保証する」という内容でも問題ありませんでした。
しかし、今後はたとえば「Aさんの入院治療に関する一切の債務を、極度額300万円まで保証する」というような形になります。
仮に、診療費が400万円かかったとしても、300万円までしか保証されないということになります。

そして、大切なのは、今後は書面又は電磁的記録によって極度額を定めておかなければ根保証契約は無効となります。
これまで利用していた連帯保証契約書などを早急に確認してみてください。
極度額を定める内容になっていなかった場合には直ちに修正が必要になります。


すでに契約している根保証に影響はあるか?

2020年4月1日以降に締結する根保証契約が対象になります。
なので、それ以前に締結していたものについては、改めて契約書を作成しなおす必要はありません。


改正民法に適合させるための対応

上記で見たように、医療機関に大きく関わる改正として

①消滅時効期間の変更
②極度額を定めない根保証の無効

の2点が挙げられます。

これらの改正によって、以下のような対応が必要となることが考えられます。


① 消滅時効期間の変更

・未収金回収のための院内ルールの見直し
・各種書類の保管期間の見直し
・旧法が適用されるものと改正法が適用されるものの峻別


② 極度額を定めない根保証の無効

・連帯保証契約書の見直し、修正
・旧法が適用されるものと改正法が適用されるものの峻別


特に契約書の修正や院内ルールの見直しについては、改正法に適合するように入念に行う必要があります。
もしも、民法改正にまだ対応できていない場合には、お早めに弁護士にご相談ください。


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